石田徹也「モラトリアム」

石田徹也 / Tetsuya Ishida

モラトリアム


石田徹也は、1973年に静岡県焼津市生まれ。日本の画家。日本の日常生活をシュルレアリスム風に描く。2005年に電車に轢かれ死去。

 

1992年に武蔵野美術大学造形学部視覚デザイン学科に入学。大学時によく見ていた画集はアンセルム・キーファーやフンデルト・ワッサーなど。谷内六郎も好きだったという。在学時に第6回グラフィックアート『ひとつぼ展』でグランプリ、毎日広告デザイン賞優秀賞受賞を受賞。武蔵野美術大学卒業後は精力的にアートに取り組むも、生活費の捻出に苦労していたようだ。

 

1997年JACA日本ビジュアルアート展で石田徹也はグランプリに輝いた。当時の審査員は浅葉克己、藤井三雄、建畠哲、タナカノリユキ、日比野克彦の5名。当時の講評の様子は以下のとおり。

司会:さて、最後の作品は石田徹也さんで「健康器具」というタイトルです。
タナカ:ポートフォリオにいいのがいっぱいありましたね。
浅葉:毎日これを30年ぐらい続けると凄いことになるという感じがしますね。
司会:同じ1人が主人公。作家自身なんでしょうか。
浅葉:自分自身でしょう。自画像ですよ。似ていますね。こういう作家は日本には珍しい。
タナカ:独特な、未来のようにも感じるし、昭和初期的みたいなノスタルジーもあります
日比野:なんか旧共産圏の社会的な冷たさもありますね。
藤井:だから、精神的な抑圧とか、あるいは人間の業みたいなこととか、政治的な1つの抑圧みたいなものを感じますね。それでいて童話的な親しみがあるなかに不気味なものがある。
浅葉:普通の日常に潜む怖さですね。

 

画面の主人公たちは皆、背広とネクタイに身をかため新入社員のようだが、表情には夢や希望は感じられない。漠然としたモラトリアム期の不安が絵から漂ってくる。絵に出てくる青年は作者自身を投影されたものだといわれており、青年の周りには、洗面器、おもちゃ、ゲーム、リュックサック、SL、ぬいぐるみなど「日常生活」や「子ども」に関するモチーフが多く散乱している。石田は自身を通じて、日常生活に潜む不安、希望なき日本社会への不安、孤独など現在の日本が抱えている社会問題を表現していた。

 

シュルレアリスムは、夢、自由連想などさまざまなフロイトの理論を背景に下敷きにしてたが、石田作品は特にフロイト理論に忠実である。実際に、石田は日ごろから思い浮かんだものをノートに残し、夢日記をつけており、それが品の創作に深く関わっていた。フロイトの理論にしたがえば石田の表現は「幼児退行」であろう。

 

また多摩美術大学教授の秋山孝氏によれば、石田徹也の表現は、シュルレアリスムのなかでも特にダリの影響を受けているようである。ダリが発明した偏執狂的批判的方法を石田は利用していることは明白である。偏執狂的批判的方法とはダブル・イメージといわれるもので、「あるもの」が「あるもの」に見えるというものである。石田は洗面器や扇風機を自分に置き換えたり、面接試験感を顕微鏡に置き換えてたりしている。

 

石田は2005年に突然、踏切事故で死去。日本よりも海外での評価が高いため、作品の海外流出が心配されている。香港で開催したオークションに出品された作品『無題』は約1200万円で落札。2013年にガゴシアンギャラリー香港で個展が開催され、今後さらに評価が高まるシュルレアリストである。

石田徹也全作品集
石田徹也全作品集
posted with amazlet at 13.10.01
石田 徹也
求龍堂
売り上げランキング: 1,223
石田徹也ノート
石田徹也ノート
posted with amazlet at 13.10.01
石田 徹也
求龍堂
売り上げランキング: 5,826