資本主義国とアート・アニメーション

 資本主義国の中で、最もアート系アニメーションの制作と作家の育成に対して独自色を出している国はカナダである。そしてその象徴となっている組織が、NFBである。


 NFB(National Film Board Canada:カナダ国立映画制作庁)は、1939年設立。カナダ国内だけではなく、アメリカ、チェコ、オランダ等世界各国からアニメーション作家を集め、映画制作庁としての事業である教育用作品を制作しながらも、作家それぞれの個性に委ねたアート性の高い作品を送り出してきた事が大きな特徴である。そして、このNFBを主な活動の場としたのが、実験アニメーションの大家N・マクラレンだった。ただし、NFBの活動が最も華々しかったという印象があるのは、アメリカ、オランダ、チェコ、そしてインド等から個性的な作家を招いていた1970年代で、近年ではアニメーション制作体制そのものも縮小傾向にあるようである。

 

 またイギリスとフランスはも、それぞれ独自のアート系アニメーションの歴史を持っている。フランスでは、象徴的かつ風刺的な内容を多く含み、絵柄や技法も多彩で、アート・アニメーションと呼ぶにふさわしい個性的な長編アニメーションが現在でも制作されている。イギリスでは「ウォレスとグルミット」シリーズで一躍有名になったN・パーク(Nick Park)、フランスでは「ベルヴィル・ランデブー Les triplettes de belleville」のS・ショメ(Sylvain Chomet)が代表的な作家である。


 イギリスとフランスに共通しているのは、いずれも何らかの形で国家が個人のアニメーション作家を資金的に助成するというシステムを有している点である。こうした事情をみるにつけ、資本主義諸国において、商業性を排除した形で制作されるアート・アニメーションとその作家が育つためには、国家の助成が不可欠であると思われがちである。確かにそうした面は否定できないが、際立った個性が求められるアート・アニメーションの世界であれば、個人の資質にくわえて、個人作家として活動していくための処世術を鍛え上げる場面が不可欠である。そうすると、資金的な助成よりも、教育システムの充実と、その成果としての作品発表の機会を新人作家に多く提供することの2点が、より重要なのではないだろうか。(参考文献:アニメーション学入門 津堅信之)