197.模索舎

 自主制作物を扱うお店の中でも、老舗中の老舗といわれるのが、40年近くの歴史を持つ新宿二丁目にある、ミニコミ自主出版物取扱書店「模索舎」だ。

 

 模索舎の歴史を知らない最近の若い人だと、タコシェと同じく純粋なサブカルチャーショップの1つとして誕生したかと思うかもしれないが、実は設立当初は学生運動家や左翼運動家との関係が非常に深く、当時は「左翼・過激派の書店」とレッテルが貼られた危険な店として知られていたようだ。

 

 模索舎の設立は1970年10月。当時、学生運動が盛んだったころだ。数ある運動グループの中の無党派の1人が、自分たちの機関紙やパンフレットを置くため、いろんな書店を周っていたが、どの店からも拒否されたことをきっかけに、自分たちでパンフレットが置ける場所を作ろうとしたのが始まりだという。また、同時に仲間の情報交換場所でもあったため、当時は半分本屋で半分喫茶店というブックカフェでもあった。 ただ、喫茶店にあまりに仲間がたまりすぎて、回転率が悪いということで喫茶店は1年余りでやめることになった。

 今も昔も変わらず、ずっと続いている模索舎の良い部分として「持ち込まれたものは、何の審査もせずにすべて置く」という方針がある。審査なしで置けるということで、電波系のビラ、よくわからない運動のチラシ、ミニコミ、ビデオまで玉石混合なところがほかの自主制作物取扱店との大きな違いだろう。

 

 この方針を決定づけたのが、1972年に起きた「四畳半襖の下張事件」だ。四畳半襖の下張事件とは、永井荷風の文学作品「四畳半襖の下張事件」を掲載した雑誌「面白半分」昭和47年7月号が、わいせつ文書販売に当たるとして警視庁から摘発されることになった。そして、そのときのコピー本が模索舎に持ち込まれて置いたところ、同時に模索舎も摘発されることになる。

 

 だが模索舎は、これをポルノ退治の名を借りた思想弾圧と受け取り、裁判で戦うことになる(模索舎裁判)。そして「持ち込まれたものは、何の審査もせずにすべて置く」という運営方針を決定づけたとか。 ただし、基本的に生ものなど、日が経つと腐って悪臭を放つものなど管理が難しいものはお断りしているようだ。ここ2~3年で断ったものとしては、「ホルマリン漬け」の持ち込みを断ったようだ。

 

 模索舎は、「審査なし」という方針があるため、純粋な創作物だけでなく政治党派の機関紙、市民運動のパンフレットなど、政治・思想・人権など堅めの物品が、数多く並んでいるのも大きな特徴だろう。 そのため、客層は通常のサブカルチャー好きの客だけでなく、新左翼の様子をうかがいに権力機関、フェミニズム系、ジェンダー系などほかの店よりも多種多様。年齢層も若い人から、昔から通っている常連のおじさんまでと非常に幅広い。何も買わずにただ、学生運動時代の武勇伝などを店員に聞いてもらいたくてくるおじさんもいるようだ。

 

 最近は、タコシェやインターネットなどミニコミ・自主制作物を扱う流通場所が増えたこともあって、持ち込まれるジャンルはある程度の傾向が見られるという。 特に多いのは「暮らし・生活」系。老舗のミニコミ「酒とつまみ」「車掌」「精神病新聞」など、下流的な生活臭が漂うものが模索舎で人気が高いようだ。店員お勧めは、駅やトイレなど色んな場所で寝たりする脱力実験系ミニコミ「野宿野郎」だとか。

 

 流通場所が増えると問題も発生する。昔に比べて客足がどんどん鈍くなってきたことだ。しかし模索舎では、歴史あるあの場所をなんとか守っていきたいという思いが店員全員にあるため、今後も経営に力を入れていく方針だという。 まず、ほかのショップではない「審査なし」という方針をより明確にしていきくこと。

 

 そして、新しい展開としては、模索舎と関わりの深いアーティストや作家を呼んで、ちょっとしたイベントもやっていくようだ。実際、2007年に入ってから店内イベントが月一ペースで行われるようになってきてる。今後の巻き返しが非常に楽しみだ。