映画:「カルネ」 ギャスパー・ノエ

 フランスで一部の人に人気の映画監督ギャスパー・ノエの代表作品。タイトルの「カルネ」とは馬肉のことだが、その色と安さからフランスでは軽蔑的な意味が含まれている。


 肉屋の店主の妻は女の子を出産後、2人を残したまま出て行ってしまう。屠畜という職業上のためか男は周囲から蔑まれ孤独にみえる。知恵遅れで一言もしゃべれない一人娘を溺愛する生活が続く。 

 

 ある日、娘に初潮が訪れる。スカートの血のシミを見た父は、男に襲われたと逆上して若者を殺しにいってしまい、投獄されることに。しかし、刑務所生活で娘と離れ自分を見つめなおすことで、男に心の変化が現れるように……

 

 この映画は孤独な男の一人娘への屈折した「愛と成熟」がテーマである。この父親の娘への愛はすごく一方的なもの。まったく口の利けない白痴の娘は、かわいがってくれている男が「自分の父」であるかどうか認知しているのも怪しく、また男は父である自分のことを愛してくれているのか分からないことに悩む。しかし保釈後、保釈金返済のため馬肉屋を売りわたし、バーの女の情婦になるのをきっかけに、過去(カルネ)を精算し、溺愛する娘とも距離を取り離れ、男は新しい人生に旅立つことで成熟を迎える

 

 かつては人形のように扱っていた娘との抱擁はまさに親子のもの。しかし、やっと正常な親子関係になれたはずなのに、「カルネ」を止めることで、馬の頭を叩き切ることで、親子は別れなければいけなかったのである。

 

 冒頭の過激的な「死(カルネの終わり)」と「生(出産)」のシーンが、この映画のすべてを伝えている。