マイクロポップとシュルレアリスム

「マイクロポップ」とは、2007年に美術評論家の松井みどりの提唱した概念で、1990年代なかばから2000年代前半にかけて日本に現れた美術表現の1つの傾向である。

 その基本姿勢は「様々な経験や情報源から集めた断片を組み合わせて独自の美学や行動様式を構築する」ことで、一見かけ離れた物の間の共通点を見出し、細部を通して大きな文脈を引き出すのがマイクロポップ表現の源流である。

 また「時代遅れの物、忘れられた場所、凡庸な消費財に新たな使い道を与えるゲームや状況をつくることで、退屈な日常に意識を与え、新しいコミュニティの意識を目覚めさせる」ことに代表されるという。

 解説を読む限りでは、70年代の哲学ブーム「構造主義」や浅田彰周辺のニューアカ思想をを美術史で応用したものに思える。

 

 また、「ありあわせもの間に合わせる」というのは、ブリコラージュのことで、もともとはシュルレアリスムの手法の1つであるはず。

・関連:ブリコラージュとシュルレアリスム

 

マイクロポップは、生活基盤の変動に常にさらされるグローバル化時代を人間的に生きるための知恵でもある。体系的価値観よりも個人的体験を通して社会の構造を考えるというが、ブルトンのシュルレアリスム宣言と同じではないだろうか。

・関連:「溶ける魚」アンドレ・ブルトン

 子どものドローイングや夢に見られる無意識の働きにたとえられ、たとえば抽象的な筆跡が猫の爪あとに変化したり、シワを通して川や山肌が反転しあうなど、青木綾子の表現が代表的なものであるというが、これは、シュルレアリスム表現におけるサルバドール・ダリの偏執狂的批判的方法と同じではないだろうか。

・関連:サルバドール・ダリ「偏執狂的批判的方法」

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