水木しげるの思想

 ベビイのころから並外れて妖怪感度が強かった水木さんは戦争中、死のことばかり考えていました。実際、何回も死にかけました。ふまじめな陸軍の二等兵だった水木さん(水木さんは一人称が「水木さん」である)は、上官から「死ね」「死ね」と言われ続け、危ない方へ、危ない方へと行かされました。生き残ったのは奇跡です。

 私には「長生きはできない」という思いがこびりついていた。自分の手のひらを眺めると、なんと生命線が兄や弟の半分ぐらいしかない。早死にするという恐怖心が心のなかにすみついたのはそれからだった。死ぬのは恐ろしい。ショーペンハウエルやニーチェなどの哲学書を乱読し、聖書も読んだ。大いに感銘を受けたものの、死の恐怖は超越できない。

 私は食べることと寝ることが大好きなあまり、小学校の入学を一年遅らせたほど。大好きな居眠りを挟みながら、ぼちぼちと仕事している。居眠りといえば、我が人生は半分寝ぼけたようなことの繰り返しで、ぱっとした出来事や思い出はあまりない。(水木さんの幸福論)