【作品解説】マルセル・デュシャン「グリーンボックス」

グリーンボックス / The Green Box

バラバラのメモを集めて共通する概念を提示


マルセル・デュシャン「グリーンボックス」(1934年)
マルセル・デュシャン「グリーンボックス」(1934年)

概要


「グリーンボックス」は1934年にマルセル・デュシャンによって制作されたメモ集作品。

 

緑色のスウェードを貼った1つ箱の中に、1923年の作品「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」(大ガラス)の制作に関係するスケッチ、メモ類、写真などが整理されず、綴じられずに、ばらばらに保存した形式となっています。1911−20年に書き溜めたもので全部で94点あります。

 

デュシャンは「大ガラス」について、出来上がった視覚美術だけで終わらず、完了にいたるまでの「思考のプロセス」も美術だと主張しました。そのため「大ガラス」の制作期間(パリとニューヨーク滞在中)におけるデュシャンの創造的思考のプロセスがメモから分かるようになっています。

 

デュシャンは、制作メモがただのバラバラな状態で終わらず、それぞれが同じ表現概念の異なるパーツのようにして関係していることを「グリーンボックス」で表現したかったようです。

 

それらバラバラのアイデアを一所に集めて全体に共通するコンセプトが浮かびあがるように見せることがこの作品のポイントです。読者は自由に94点のメモを選び、配列して、自分自身のストーリーを作ることができます。

 

グリーンボックスは通常版とメモの原本を一点ずつ添えた特装版10部をくわえて1934年9月に最初の箱が出版されました。その年に、特装版10部と通常版35部が売れて、印刷費はほぼ回収できました。

 

グリーンボックスのメモを誰よりも読みふけったのはアンドレ・ブルトンでした。「ミノトール」1934年12月号で、ブルトンは「花嫁の燈台」というタイトルのエッセイで、グリーンボックスのメモを参照に「大ガラス」を解読し、現代美術の最高峰に位置づけました。

マルセル・デュシャンTop

 

<参考文献>

・マルセル・デュシャン自伝

・マルセル・デュシャン展 高輪美術館 西武美術館

メトロポリタン美術館