近藤聡乃「Kiya Kiya(2011)」

近藤は2008年秋よりニューヨークに拠点を移した。海外生活をするなかで苦労したことに言語問題があった。日本語と英語の表現の幅に差があるため、相手に自分の気持ちを伝えるのに何度ももどかしい思いをしたという。

こうして幾度となく生じる言語的摩擦を通じて、近藤は次第に「言語」に関心を持つようになっていった。知っている感情だが、それを言い表すための言葉がうまく見つからないという気持ちがあった。

ある日、近藤は澁澤龍彦『少女コレクション序説』中の「幼児体験について」という一編で「きゃきゃ」という不思議な言葉に出会った。この言葉が「デジャ・ ヴュの後の寂しいような、何かを思い出しそうな、なんともいえないあの感じ」を意味であるとわかったとき、自分が探していた言葉を見つけることができ、もどかしい思いを解消できた。

そしてまた、まだ何語にもなっていない抽象的なものがこの世には意外とたくさんあることに気づく感覚を視覚芸術化することにした。それが2011年のアニメーション作品「KiyaKiya」である。


「KiyaKiya」 の世界では、あらゆるものが目まぐるしく移動し、変身し、入れ替わり、そこに幾重もの境界が出現する。紙芝居で物語を語る少女の前面には、読めそうで読めない文字が現れては消える。そして、読めそうで読めない文字から、変幻自在な生き物が出現し、草木の蔓や木の実に変わり、交わった少女の身体の自分の色に染めていく。


また、アニメーションの中には実際に鑑賞者が読めない記号のような文字がたくさん出てくる。鑑賞者もまた近藤と同じく、文字とは認識できるけれど、読めない文字のもどかしい感覚、言葉を知らないことに対する怖さみたいなものを感じて欲しかったからだという。ちなみにこの不思議な文字は、ひらがなの五十音とアルファベットの4文字で全部で54文字を作り、 それをパーツに組み換えて表示したもので、具体的な意味はないようである。