澁澤龍彦×四谷シモン「シュルレアリストについて」

●ブルトン診療所


澁澤:シュルアリストっていうのは、前衛芸術といわれる時代において、実はあまりアバンギャルドでは全くなくて、変な病気みたいな人が集まっていたのが事実ではないかな。

 

シモン:そうですね。

 

澁澤:みんな病気なんじゃないですか。シュルレアリストのいい人は、だいたいそうなんじゃないの。しかしね、それを集めたブルトンというのがすごいよね。よく集めましたね。そんな病気の作品を。シモンが「才能は、変態の度合いに正比例する」って手紙に書いてきたでしょう。それは、ベルメールの写真集を見たときに感じたわけでしょう。

 

シモン:そう思いましたね。

 

澁澤:でも、その前にモリニエがあるとか、いろんなものがあるから、そういうふうに思ったわけね。

 

シモン:そうですね。フィニーだって、やっぱりそうだと思う。

 

澁澤:バルテュスだって、おかしいしね。あそこらへんの人たちは。

 

シモン:やっぱり、おかしいですね。

 

澁澤:要するに、20世紀の前衛運動とか何とかいっても、病気の人が集まったわけだ。

 

シモン:診療所ですね。シュルレアリスムに関しては。キュビスムやほかは知りませんが。シュルレリスム=診療所主義というか。ブルトン松沢病院に集まった絵の上手な人たちというのは、正しい解釈ではないでしょうか(笑) 

 

澁澤:そうです、そうです。まったくそのとおりだね。でも

 

ただの変態ではダメだけどね(笑)

絵がうまくないとね

 

要するにシュルレアリストといわれる人は、作品を描かないと、みんな犯罪をやっていたんじゃないですか。デュシャンもそうとう変だったんじゃないかね。

 

シモン:やっちゃってますからね、しかも老年期に…… 

 

澁澤:だって、あれ、変だよ。だって、


最後の『遺作』があんな覗き趣味の絵


で……。のぞき屋ですね。普通じゃない。

 

シモン:豚革か何かをはったようなね。でもベルメールみたいに通常の好色家も。

 

澁澤:全然好色家じゃないです。むしろ反対でしょう。アンチ・エロチカーですね。まあ観念だな。

●メイド・イン・USA


シモン:この間、あるところでポルノビデオ見たんですよ。ぼくは初めてみたの、アメリカものと日本ものがあるらしい。日本ものは、ちゃんと中に入れたまんま、いかせるんですね。だから、いったという証拠がなくて、ただ運動がストップしてきたというので、いったということになっているのねところが向こうのは、いく前にちゃんと抜いて……。やってて抜いて、それで男がいっている状態が、ちゃんと映るんですよ。全部そう。

 

澁澤:つまり、射精でしょう。

 

シモン:そう。

 

澁澤:はっきり言えばいいじゃない。

 

シモン:それを見せるんです、ちゃんとやっているかどうかということを。

 

澁澤:それは男の射精でしょう。日本ではそれがないんですか。

 

シモン:日本のものって、だいたい入れたままの状態だそうです。これもあるところでホモのポルノを見たんです。メイド・イン・U・S・A。1人の男が台座みたいなところにいて、あぐらをかいて、マスターベーションをしているんです。周りにいる男たちは、半円形に椅子にすわって、それを見ながらやっぱりマスターベーションしているんです。真ん中でやっている人は、中心人物にふさわしく中心部もとてつもなく大きくて、マスターベーションをやると、みんなも合わせるんですよ。結局クライマックスに来て、真ん中の男が、身体をぐっと曲げて、自分のものを自分の口でくわえちゃう。

 

澁澤:よくできるね。普通、できないよ。

 

シモン:その人は特別、スターなんでしょうね、そういう技術も含めて。

 

澁澤:アクロバットだよ、それは

 

シモン:出た精液が、口からあふれちゃうのね。次の瞬間、それを見た男たちが、いっせいに射精しちゃうワイセツというより不思議な感じがした。

 

澁澤:そうすると、観客もみんな勃起しているわけだね。

 

シモン:もう全部そうですね。これはちょっと病的だなと…・

 

澁澤:病的といえば、それは病的だよ(笑)

 

シモン:自分のものをくわえて、周りに見せて、それを見たやつを全部射精させる。しかも、それをフィルムに撮るわけでしょう。

 

澁澤:しかし、自分のものをくわえるということはできないぜ

 

シモン:普通はできない。でも、向こうはバケモノが多いから(笑)

 

澁澤:しかし、できないねぇ。

 

シモン:でも、それを見た時、興奮とか、そういうことじゃなくて、ああ、これは何だろうと思った。コイツスをしているとか何とかいうことじゃなくて。結局、オナニズムになってしまうんですね。行為じゃなくて観念