【美術解説】川島秀明「女性ポートレイト」

川島秀明 /Hideaki Kawashima

抽象と具象を行き交う女性像


概要


川島秀明(1969年〜)は日本の画家。愛知県生まれ。1991年東京造形大学卒業。現在、東京を拠点として制作活動をしている。抽象化された女性ポートレイト作品で知られるが、川島によればセルフ・ポートレイトというわけではなく、他人が自分に似ているのだという。古典仏教(天台宗)の修行の経験があり、そのため作品にはしばしば仏教的なモチーフが描かれることがある。

 

■関連サイト

http://tomiokoyamagallery.com/artists/hideaki-kawashima/

https://www.artsy.net/artist/hideaki-kawashima

 

内面と外面の女性


川島秀明は、1969年に日本の愛知県で生まれる。1991年に東京造形大学を卒業。青年時代は文学青年で、特に三島由紀夫に決定的に影響を受ける。そのため90年前後の作品は三島由紀夫を題材とした作品を制作している。絵画では奈良美智マーク・ライデンピエール・エ・ジルに影響を受けている。

 

1995年から2年間、比叡山延暦寺で天台宗の修行の公募に応募して受かる。2000年ごろに名古屋で、草薙凛というペンネームでインターネット上にバーチャル寺院サイトを運営しており、川島が住職で閲覧者は参拝客という形式だったといわれる。その後、東京に移動して、名前も本名の川島秀明に戻し、本格に絵画制作を始める。

 

川島の女性ポートレイトは、私たち自身の潜在下に眠っている理想の女性像「アニマ」と呼ばれるものを具現化しているように思える。しかし、2010年ごろから作風は少し変化する。これまで、どこまでも内省的に自己の中のアニマを見つめすぎたが、その肥大化しすぎた自意識を一度ニュートラルに戻すために、その目は他者へと向けられはじめる。その結果、作品の人物に身体ができ、またそれぞれ異なる髪型や服装が描かれて、モデルを想像させる具体的な個性を放つようになった。(※左画像)

 

2014年に渋谷ヒカリエで開催された個展「come on」では、ここ4年で具象化し過ぎた女性ポートレイトをさらにもう一度、抽象化、または弁証法的に具象と抽象を折衷させたような作品が多く見られた。