近藤聡乃「少女時代の記憶」

近藤聡乃 / Akino Kondoh

少女時代の記憶


概要


近藤聡乃(千葉県生まれ。1980年-)は、日本のマンガ家、アニメーション作家、美術作家。2008年よりニューヨーク在住。思春期少女のポートレイト作品が中心で、多摩美術大学在学中に制作したアニメーション作品「電車かもしれない」が最もよく知られている。

 

自らのビジョンを引き出す際に利用しているのは「子ども時代の記憶」で、その”アカデミックに洗練された絵画技術”、”デペイズマン表現”、”土着的モチーフ”、および”内面に潜む不安な性的描写”などもあわせて、スペインのシュルレアリスト巨匠サルバドール・ダリに通じるものがある。

 

近藤聡乃は、いろいろな手法でいろいろな媒体に向かって表現する。そのため、マンガ家、アニメーション作家、アーティストなどさまざまな肩書きを持ち、立場は曖昧である。

 

本人としては、高校のときにマンガを描き始め、大学の課題でアニメーションを作るようになり、そうした流れで一枚絵も描き始めて、現代美術のコマーシャルギャラリーで作品を発表しているだけという。「よし、マンガ家になるぞ」と決めたことも、「これからは現代美術家だ」と思ったことも本人は一度もない。 自身の立場は常に曖昧である。

 

そして、自身が行き来する曖昧な境界を私たちにも超えることを促す。誰でも知っていることなのにそれを表す言葉まだないような、形のない曖昧なことを具象化する。より刺激的で開かれた、自由なヴィジョンに向かうことを。

 

近藤の「曖昧な境界」性は肩書きだけでなく、作品にもよく現れている。てんとう虫に見えたものはボタンで、蛙だと思ったものは石で、箱の中のうさぎはクリー ムパンに変わり、そして自分自身は分身の術で無数に増える。そのような曖昧な境界の世界を近藤は、線で、形で、言葉で、具体的に視覚化していく。

 

近藤がその曖昧なビジョンを引き出す際にヒントにしているのが、子ども時代の印象的な出来事や記憶である。理性や常識に支配されていない、あらゆるものが未分化のままの子どもの世界の感覚である。それは言語的コミュニケーションが不能な虫や植物や土との生々しい交感の記憶を、近藤は呼び覚ましているのである。

 

もう1つ近藤の表現で忘れてはいけないのが思春期少女の性描写である。排卵された卵子の亡霊、卵を育てる少女など産む性としての描写。また延々とスカートの内側に縫い付けられる赤いボタンは、反復する月経を連想させる。さらに、少女が植物へと変身するなどここには、融合、分裂、増殖を繰り返す生殖のイメージがある。

略歴


電車かもしれない


近藤聡乃「電車かもしれない」

近藤聡乃といえばバンド「たま」とのコラボーレション作品が有名である。「たま」との出会いは多摩美術大学時代にまでさかのぼる。近藤は、多摩美術大学グラフィックデザイン科に入学し、アニメーションを専攻することになる。 彼女の教授はタマグラアニメの基礎を構築した片山雅博である。

てんとう虫のおとむらい


近藤聡乃「てんとう虫のおとむらい」

卒業制作として作られたアニメーション版「てんとう虫のおとむらい」は、納得いく出来ではなかったため作り直すことになる。再度挑戦して制作されたものは、オリジナルと全く異なるものとなり、2006年にミズマアートギャラリーで行われた個展「てんとう虫のおとむらい」で公開された。

果肉


近藤聡乃「果肉」

2008年の個展「果肉」のテーマは「人と植物の交わり」である。それは人間が植物を食べ、また逆に食べられる。また果実が人間の内臓の様子するというシュルレアリスムでいうデペイズマン的な要素をもち、またそれは「人と植物の中間のもの」という意味でもあるという。

KiyaKiya(2011)


近藤聡乃「KiyaKiya(2011)」

2011年のアニメーション作品「KiyaKiya」は「胸がきやきやする」という古い日本語から取った言葉である。近藤は、澁澤龍彦『少女コレクション序説』中の「幼児体験について」という一編で、この言葉と出会い、制作するきっかけとなった。

KiyaKiya(2013)


近藤聡乃「KiyaKiya(2013)」

「KiyaKiya」は、普通に再生すると6分半で終わってしまうアニメーションだが、その1秒1秒は15枚の絵からできている。そこで「6分半の映像」としての時間と、「1/15秒の絵の集積」としての時間。この2つの時間を「違うもの」として扱うことにした。

略年譜


個展  
2013 「KiyaKiya 1/15秒」ミヅマアートギャラリー/東京
  「KiyaKiya アニメーション原画展」六本木ヒルズA/Dギャラリー/東京
  「KiyaKiya 1/15秒」galleri s.e/ベルゲン、ノルウェー
2011 「kiyakiya」ミヅマアートギャラリー/東京
2008 「果肉」ミヅマアートギャラリー/東京
2007 「hint」Tache-Levy Gallery/ブリュッセル、ベルギー
2006 「てんとう虫のおとむらい」ミヅマアートギャラリー/東京
2004 「近藤聡乃展」trance popギャラリー/京都
2003 「近藤聡乃展」ギャラリーエス/東京
グループ展  
2013 「The Garden of Forking Paths:Exploring Independent Animation」OCAT,
OCT Contemporary Art Terminal Shanghai/上海、中国
2012  「ジパング展-沸騰する日本の現代アート」新潟県立万代島美術館/新潟、秋田県立近代美術館/秋田へ巡回
   「Planete Manga!(at Studio 13/16)」Centre Pompidou/パリ、フランス
2011  「East West Connect」Above Second Gallery/香港
受賞歴  
2010 アニメーション「てんとう虫のおとむらい」ダイジェスト版
・YouTube Play:Biennale of Creative Video」、TOP 25 videos
2003 マンガ「つめきり物語」-平成15年度第7回文化庁目メディア芸術祭、マンガ部門審査委員会推薦作品
2002 立体作品「はこにわ虫」-GEISAI1-GP/草間彌生賞
  第3回ユーリ・ノルシュテイン大賞/観客賞
  平成14年度第6回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門/奨励賞
  BS-hi「デジスタ」デジスタ・アウォード2002 アニメーション部門賞
2000 マンガ「小林加代子」-第2回アックス新人賞/
奨励賞
 コレクション  
  Asia Society、ニューヨーク、アメリカ
  川崎市市民ミュージミアム、川崎
 

森美術館、東京

 

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