143.ルイス・キャロル

ルイス・キャロル / Lewis Carrol


概要


ルイス・キャロルは、イギリスの数学者、論理学者、写真家、作家、詩人。

 

よく知られているキャロルの小説『不思議の国のアリス』は、もともとは当時勤めていたイギリスのオックスフォード大学クライスト・チャーチ学寮の学寮長リドル博士の次女アリス・プレザンス・リドル(当時10歳)のためだけにに書かれた物語である。

 

続編の「鏡の国のアリス」は、アリスをはじめとする登場人物たちはチェスのルールに従って、桝目で区切られた鏡の国の中を行き来し、前作と異なり知的な構成の難解小説となっている。

 

ルイス・キャロルの世界は「言葉遊び」に満ちあふれているのが特徴である。言葉遊びやライムやリズムなどを使って世界を形成したシェイクスピアやマルセル・デュシャンとよく似ており、一見低レベルな言葉遊びが哲学的・論理的思考と結びつき、ばかばかしいのに高尚であり、笑えるのに深遠である。

少女との言語遊戯「不思議の国のアリス」


「不思議の国のアリス」は、作者ルイス・キャロル(本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン)が、当時勤めていたイギリスのオックスフォード大学クライスト・チャーチ学寮の学寮長リドル博士の次女アリス・プレザンス・リドル(当時10歳)のためだけにに書かれた物語。


1862年7月4日(金)のよく晴れた午後、ドッドソンはリドル博士の幼い三人の娘たちをボート遊びに連れ出した。物語の冒頭に掲げられた詩がそのときのようすを歌ったものであるが、そのときに即興で作ったおかしな物語を肩越しにアリスに語ったことが創作の発端である。


三姉妹を連れた一行がオックスフォード大学の近くの橋から出発して二時間ほど川をボートでのぼり、ゴッドストゥという村でピクニックをして、クライスト・チャーチ学寮に帰ってきた。そして三人の子どもたちを学寮長宅へ帰したときに、次女のアリスがドッドソンにこう言った。


「ああ、ドッドソン先生、アリスの物語をすっかり紙に書いてくださったらいいのに、わたしのために」


そこで、ドッドソンはやってみるよといい、その晩ほとんど徹夜して、その日楽しくボートの上で語ったアリスに語ったおかしな物語を思い出しながら、手書きの本にしていたのだという。さらに自分でイラストまでつけて、その自作の本をアリスに贈ったのだった。この手作りの本は「不思議の国のアリス」の原型となる「地下の国のアリス」である。アリスがウサギの穴に落ちて地下の国入ってしまうお話だから最初は「地下の国のアリス」と名づけられたようだ。


さらに二年以上の歳月をかけて、ドッドソン自身が挿絵も描いて丁寧に作った手書きの本「地下の国のアリス」をアリスにプレゼントした。また並行して、挿絵絵画家ジョン・テニエルに挿絵を頼み、物語も大幅に書きなおして「不思議の国のアリス」が1865年に出版されたようだ。


ルイス・キャロルは幼いアリスが大きくなって大人になってしまうことをとても嫌がっていた。物語の中でアリスが大きくなったり小さくなったりすることとは無関係ではなく、少女のまま大きくなってほしいという思いがこめられているのかもしれない。


また、ルイス・キャロルのファンタジーの世界は「言葉遊び」に満ちあふれているのが特徴だ。言葉遊びやライムやリズムなどを使って世界を形成したシェイクスピアやマルセル・デュシャンとよく似ており、一見低レベルな言葉遊びが哲学的・論理的思考と結びつき、ばかばかしいのに高尚であり、笑えるのに深遠であるといった特徴がある。


ルイスの言葉遊びの複雑さは、「アリス」だけに限らない。少女たちに書き送った詩や手紙にもいつもパズルのような言葉遊びがされていたようだ。同じ子供向けロングセラーでも、たとえばグリム童話収録の物語などとはまるで次元が異なり、ディレッタントな大人でも子どものときとは違う視点で十分楽しめる本である。(不思議の国のアリス ルイス・キャロル 河合祥一郎訳 角川文庫)