エニアおばあちゃんのフェミニン・トラッシュアート

ユージニ・オルター・プロップ / Eugenie Alter Prop


概要


略歴


ユージ二・オルター・プロップことエニアおばあちゃんは、1922年モスクワ生まれ。お父さんが元々裕福だった上に、ヒトラーの迫害を逃れてオーストリアから渡米した後に選んだ結婚相手も、ユダヤ教徒のための学校をいくつも設立するなど慈善事業にも熱心なエリートビジネスマン。

 

自らも、ユダヤ人社交界で活躍をしたり、3ケ国語に堪能な語学力を活かしてニューヨーク近代美術館の通訳係を勤めるなど社会参加にも積極的で、家庭では子供や孫にも恵まれなど、他人も羨むような上流生活に慣れきっていたが、突然何が起こったのかゴミアートに熱中しはじめたのは60才の時のことだった。

 

当初は、ただ作品を作っているだけだったが、いつの間にか部屋の壁面に直接、作品を飾りつけるようになり、こちらの壁面からあちらの壁面へと増殖する。素材にゴミ屋敷アートの定番である貝殻やバービー人形などが加わることで、必然的にお作品が立体化していくと、壁面だけにとどまらず、椅子から家具から、天井からぶら下がっているシャンデリアまで広がる。

 

もともとの室内調度の整った洗練された屋内と、大爆発のゴミアートがどきどきドッキングして、見渡す限りの部屋全体にわけのわからない統一感をかもしだしている。アートの大洪水は、夫の来客用と本宅と別荘用、あわせて3軒ある大邸宅の屋内を次々に呑みむと、今度は屋外へと伸びていった

 

高価でエレガントなレース編み、シルクやサテンなどを、原型を完全に失ったゴミ同然の状態にまで大胆に裁断し、花びら、蝶、魚、それに何だかよくわからない無数のかわいい形や不細工な形に加工する。またそれを、加工食品の容器や錠剤のビンや消臭剤のフタなどのゴミと、ジュエリーやパールと、ラメラメやリボンやアップリケなどを一緒にして、タピストリーなどを土台に縫い合わせていく。 レイアウトは気まま。

 

シンメトリーをかたちづくっている作品には、意識的にか無意識にかユダヤ教のカバラの樹のかたちをなぞったものが目につく。しかし、バービー人形でセフィロートを示している生命の樹を見て、そこに宗教的な寓意がこめられているかどうかは全く分からない。そして作成したゴミコラージュ作品は、同じような手法で作った額ぶちのようなもので囲い、お部屋のなかを飾り付けていく。

 

避暑地マイアミの別荘の、木立ちのある公園のような広い中庭は、アニアが最後にみつけた巨大なアートの遊び場だ。工事現場の三角パイルが15、6個も取り付けられており不気味な風車にふさがれた木製ベンチや木の幹が、プラスチックの椅子や梯子やじょうろやスポークが根元から梢へとよじ登るように貼り付いた謎のオブジェになっている。 

 

 ゴミ屋敷アートは、ビンボーを父に、孤独を母に持つ、そんな迷信を一瞬にして吹き飛ばす。ダイナミックなパワーに満ちたEniaちゃんは今年85才。アートによる世界征服までの時間はまだたっぷりと残されているはずだ。(※2009年に永眠されたようです。)