谷口ナツコ「反復点描壁画」

谷口ナツコ / Natsuko Taniguchi

反復点描壁画


概要


谷口ナツコ(1968年、北海道旭川生まれ)は日本の画家。


1993年に世田谷美術館で開催されたアール・ブリュットの展覧会「パラレル・ヴィジョン」で、線と点の反復で構成されたシメントリカルな城の絵画ジョセフ・クレパンに影響を受ける。自分自身も次第にクレパンのような絵を描きたいと思うようになり、独学で現在の点描方法を発明。ほかに、ルサージュ、ヴェルフリ、ゾンネンシュターンなどさまざまなアール・ブリュット作家の表現方法から影響を受けている。また、表現内容に関しては幼児性愛が主題になっているようである。


2000年代半ばぐらいまでは、おもにデザインフェスタで展示活動していたが、現在は現代美術のギャラリー(ミズマ・アクション)で展示活動が行っている。

技法


ジョゼフ・クレパンの点と線の反復で構成された絵画に影響を受けているものの、当初、描き方が分からかったため、独学でクレパン的な技法を開発する。その方法とは、木工パネルに下地を作り、筆で下地を描いてから、トレーシングペーパーを円錐状に丸めてケーキのデコレーションなどで使用する絞り袋のようなものを作り、そこにアクリル絵具を入れて、すべての線や点をつぶつぶに絞り出して描く。この反復である。またアクリル絵具のほかに、ラメ入りや蛍光色、透明ゲルや仕上げのニスなどを使用。そうしてできあがった反復的な作品に光を当てると描いたすべての点が反射し、キラキラと目が眩むような美しい絵となる。

管理人コメント


作品に登場する少女たちは、「現実」と「空想」のあいだをいったりきたりして遊んでいるように見える。彼女たちは、大人になることからも子どもであることからも逃避しており、身体に付いている女性器は「何でもないもの」と扱われるようである。膣から流れる女性の象徴である生理の血は絵具の代わりに使用され本来の目的から外れる。血のついたタンポンはカウボーイの縄投げのように振り回され、大人のサインに対してどこか反発してるようにも見える。

 

一方で、大きな目で歯をむきだしにした怖い顔の少女には不安を感じられる。試験管らしき物体のなかで牙を出した白い生き物と抱き合う少女。そして少女の周りを埋め尽くす胎児のようなもの。そうした不安感は少女の表象的行動と作品全体にわたる過剰な色づかいや空間恐怖症的な点と線の異常な描き込みによって相殺されたり、またアンビバレンツな要素の組み合わせにどこか観るものに巨大な不安を与える。

 

作品に対する作家のコメントは以下のとおりである。


「絵に光があたり、全ての線、点、色が浮き上がり、そのひとつひとつがきらきらと輝いてるのを見る時、これはこれはもう嬉しくてなりません」

 

不安なのにキラキラ美しいという2つの矛盾した表現は、子どもでも大人でもない少女独特の感覚を表現しているようだ。

個展


2001年 「アカイユメ、アオイユメ、ムラサキノキオク」ギャラリー砂翁、東京
2002年 「谷口ナツコ」Desigh Festa Gallery、東京
2003年 「谷口ナツコ」Desigh Festa Gallery、東京
2004年 「谷口ナツコ」Desigh Festa Gallery、東京
  「ちいさなこと」ヴァニラ画廊、東京
  「おおきなはなし」Studio Zone、東京
2006年 「ごあいさつ」Desigh Festa Gallery,東京
2008年 「谷口ナツコ」ギャラリーテオ、東京

 

関連記事


ジョセフ・クレパン

彼の描く絵は、左右対称シンメトリーの奇怪な偶像、あるいはインドやエジプト風の寺院の絵である。63歳から描き始めたという。ある晩、楽譜を写していると、彼の手が五線紙のあいだに音符を書くことをやめ、ひとりでに動き出して、自分でもよくわからない不思議な幾何学的な図形を描き始めた。