【作品解説】サルバドール・ダリ「茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)」

茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)

Soft Construction with Boiled Beans(Premonition of Civil War)

スペイン内乱を的中させた予言的作品


「茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)」(1936年)
「茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)」(1936年)

概要


「茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)」は、1936年にサルバドール・ダリによって制作された油彩作品です。フィラデルフィア美術館が所蔵しています。

 

ダリは次に説明する予言を証明するために、戦後にタイトル「内乱の予感」に変更したといわれています。1936年制作とされているが、最近の研究では1934年制作という説もあるようです。

スペイン内戦を予言


 ダリによれば、迫りつつあるスペインの内戦の不安を表現したもので、実際にこの作品が描かれた「スペイン内乱」が勃発しました。ダリの不安事に対する予言力が発揮された作品で、ダリは理性で考えた未来よりも、潜在意識・無意識におけるイメージの予言力の高さを認識したといいます。

 

ほかに予言力を発揮した有名作品では、「新人類の誕生を見つめる地政学の子供」があり、第二次世界大戦後のアメリカ繁栄の時代を見事に的中させました。

今にも弾けそうなもののダブルイメージ


 手と足だけの奇妙な怪物が、首と足と乳房だけの怪物とレスリングをしているような不思議な作品。二体のように見えますが、実際は1つの身体内であり、これは自己分裂を起こし始めているという状態だそうです。

 

怪物の手足や指先が茹でたインゲン豆に見えることから、この題名が付けられており、今にも弾けだそうとするインゲン豆と今にも起こりそうなスペインの内乱をダブルイメージとして表現しています。

迫り来る不安を分析する


 怪物は木や茶色の箱の上に立っています。背景の空は曇りががっており、いくらかは暗い部分がありますが、それも迫り来る不安を表現しているようです。

 

わかりづらいですが、画面左下の背後にいるひげ面の人物は、科学雑誌に掲載されていた「心臓マッサージ器の実地指導をしている医師」のイラストから引用されており、内戦へと向かいつつあるスペインの様子を診断するダリ自身やジグムント・フロイトを象徴しているようです。

スペイン内戦勃発後のダリ周辺


スペイン市民戦争が発生する2年前の1934年、ダリとガラはゼネストやカタルーニャ分離独立派の武装蜂起の影響を受け、カタルーニャに閉じ込められてしまいます。そのときにスペインの内乱を予感したといいます。その後、2人はパリへ逃亡し、そこで結婚します。

 

ダリとガラをパリへ誘導してくれた護衛は、2人をパリへ誘導したあとスペインに戻り、スペイン市民戦争で戦死しました。

 

内戦後、ダリがスペインに戻るとポルトリガトにあった家は戦争で破壊されてしまい、また妹のアナ・マリアは共産主義兵士たちに投獄され拷問を受け、学校以来のダリの友人である詩人のフェデリコ・ガルシーア・ロルカは、ファシストによって銃殺されたことに大変なショックをうけたといいます。

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