マックス・エルンスト「百頭女」

惑乱、私の妹、その名は百頭女。

「処女懐胎」
「処女懐胎」

概要


「百頭女」は、1929年にマックス・エルンストが制作したコラージュ小説。19世紀の挿絵本やカタログの木版画を切り抜き貼りあわせて制作しているのが特徴である。

 

原題を「 La Femme 100 Tetes」 といい、英題は「 The Hundred Headless Woman」である。サンテート(100 tetes)はサンテート(sans tetes:無頭)にもなるというシュルレアリストがよく使うダジャレを考えると、「100の首を持つ女」というよりは、「100人の首のない女」または「100の首のない女」と解釈したほうがよいかもしれない。英題のWomanは単数形になっているが、正直、好きなように解釈してよい。ちなみに英語版の表紙は、このページの画像と同じだが、私個人も全ページで最もお気に入りの画像である。


コラージュとは、既成の印刷物から特定の部分を切り取り、ほかの印刷物に貼り付けることによって、本来の内容を組み替えてしまう表現方法である。農業や化学でいうところの遺伝子組換食品やSTAP細胞やiSP細胞生成の実験のようなものである。この本来の内容や文脈から切り離して、別の文脈に組み込んで新しい価値を創造する方法は、ポップ・アートへ受け継がれている。


エルンストはコラージュによって、常識的に考えると、本来1つの現実的空間や視界に同居することがないイメージを1つの構図のなかに配置させ、それにより鑑賞者は、驚きや不安を感じる。


パソコンのフォトショップで行うコラージュとの差異は、「計画的産物」「偶然的産物」であるかどうかである。パソコンでコラージュ作業をすると、素材の大きさや形をコラージュ先にぴったり合うように自らグラフィックソフトで変形できるため、最終的な形態が最初から把握できてしまう。


しかし印刷物のコラージュは、素材を選択するときこそ作者の「理性」や「自己意識」は大きく働くものの、コラージュ元とコラージュ先の素材の形や大きさがピッタリ一致しないと、何度も素材選びをやり直す必要がある。そのため「運命的」「偶然的」といった要素が介入しやすくなるのである。そうして、何度も素材を選びなおしていて、ピタっと一致した時に、特に作者自身の偶然的驚異が発生し、満足するのである。


小説内の百頭女は幽霊のようなかんじである。亡霊である。

つまり、百頭女、百人の首のない女とは、百人の女の頭を入れ替えてできあがる亡霊を背景とした錬金術なのである。エルンストの人生をそのまま反映しているようである。

 

PDF版


英語版「百頭女」は無償で閲覧できる。ほとんど文章という文章がないので、読んだことがない人はPDF版での閲覧をおすすめする。画像もダウンロード可能。

La Femme 100 Têtes (The Hundred Headless Woman)

映像版


百頭女は、1967年に映像版が作られている。