【作品解説】パブロ・ピカソ「人生」

人生 / La vie

ピカソ「青の時代」のすべてが凝縮された傑作!


パブロ・ピカソ「人生」(1903年)
パブロ・ピカソ「人生」(1903年)

概要


ピカソの「青の時代」の作品で、「青の時代」の集大成ともいえる傑作。


ピカソの「青の時代」(1901-1904年)は、薄暗い青や青緑で描かれた陰鬱な絵画が特徴である。実際に「青の時代」の時期のピカソの人生で最も最悪な時期だった。


画面左に描かれているのは、親友カサジェマスとその恋人のジェルメールである。失恋に落ち込むカサジェマスをピカソは元気づけようとしたが、カサジェマスの精神はどんどん悪化。最後はジェルメールを誘い出し拳銃で撃ち、自らもこめかみに銃口を当て自殺。精神的に不安定だった友人をうまく助けられなかったとして、ピカソは自責の念に苦しむ(なお、ジェルメールは撃たれたふりをしていて死んでいない)。


右側は母子像である。母子像も「青の時代」によく現れるモチーフで、この頃ピカソは学生生活も終わり、本格的に自立を始めた時期。バルセロナ(故郷)とパリ(自立)の2つの時間が分離し始めている不安な時期である。そうした中で、故郷バルセロナは「母」に、ピカソは「赤ちゃん」に投影されているのではないかと思われる。


また母はカサジェマスを見つめ、カサジェマスは赤ちゃんを見つめ、ジェルメールは下を向いている。カサジェマスはダリと同じく性的に不能であったらしく、自殺の動機も性的不能が問題にあったといわれており、そのため母の視線は慈愛的な視線でカサジェマスに向けられ、性的不能に振り向かないジェルメールは視線を下に落としているというわけである。


二人の男女と母子像を中央で隔てているのは二枚の絵である。上には抱き合う男女が、下にはうちひしがれる人物像が描かれている。


裸のカップルが示す性愛に母子愛が対置され、愛の裏側に存在する孤独や苦悩が中央のキャンパスに描き込まれるという複雑な構成となっている。