【作品解説】マルセル・デュシャン「Tu m'」

Tu m'

お前は私を〜


マルセル・デュシャン「Tu m'」(1918年)
マルセル・デュシャン「Tu m'」(1918年)

概要


「Tu m’」は、1918年にマルセル・デュシャンによって制作された油彩作品。1913年の「チョコレート磨砕器 No.2」から5年ぶりに描いた油彩作品であり、デュシャン最後の油絵。これ以降、油絵は描いていません。この作品はデュシャンがそれまでしてきたことの集大成として、カタログの形で、視覚化されています

 

デュシャンの後援者であるキャサリン・ドライヤーの書斎の本棚の上の空間を埋めるために依頼された作品のため、横長になっています。

 

横長の画面いっぱいに3つのレディメイド作品「自転車の車輪」「コルクの栓抜き」「帽子掛け」の影が描かれています。この影は実際にキャンバスの上へレディメイドの影をうつし、その形のとおりに丹念に鉛筆をなぞったものです。

 

左上にはカラーの四角形が永遠と並んでいます。手前のチャートを留めているように見えるナットは本物です。その下には「3本の停止原理」の曲線定規が、重なりあって描かれています。中央の裂け目のようなものは、だまし絵風に描かれたもので、そのだまし絵の裂け目を本物の3本のピンが閉じようとし、そこから本物の瓶ブラシが飛び出して、その影が画面に映っています。

 

その下に看板描き職人に頼んで描いてもらった右を指している手があり、その手の方向には「停止原理」で引かれた曲線に、小さな四角のカラーチャートが幾何学的に遠近を持って描かれています。この四角のカラーチャートと停止原理は対応しています。

 

「Tu m'」という題名についてデュシャンは「母音で始まる動詞であれば、何でも好きな言葉を置いてかまわないのです」とコメントしています。「Tu m'」直訳すると「お前は私を〜」となります。

 

タイトルでよく言われるのは「Tu m'ennuies」で「おまえは私を退屈させる」と読みます。デュシャンは一度捨てた油絵をキャサリン・ドライヤーの依頼でまた描かされており、「おまえ(油絵やキャサリン)は私を退屈にさせる(うんざりさせる)」と読むのが一般的な解釈です。

 

マルセル・デュシャンTop

 

<参考文献>

マルセル・デュシャン展 高輪美術館 西武美術館