【画集解説】山本タカト「ヘルマフロディトゥスの肋骨」

耽美画家への成長を遂げた記念碑作品

2008年発売の第五画集


吸血鬼シリーズ


「ヘルマフロディトゥスの肋骨」は山本タカトの第五作品集。2008年にエディション・トレヴィルより発行(発売:河出書房)。出版社の説明によれば日本の耽美アートを代表する画家へと成長を遂げた記念的作品集であるという。また山本タカト画集デビュー10年目に放った記念碑的モノグラフ。

 

本書で収録されている作品で最も多いのは「吸血鬼」シリーズ。吸血鬼はもともと山本タカトが幼少の頃に最も影響を受けており、創作の原点となる主題。ページの3分の1ほどは吸血鬼作品で占められている。耽美な少年吸血鬼や眠れる森の王子が現れる。

「吸血鬼」(2006年)
「吸血鬼」(2006年)

緊縛少女シリーズ


次に目立つのは緊縛少女シリーズ。吸血鬼シリーズは比較的BLカラーが強く、身体の露出は少なめだが、緊縛少女シリーズでは露骨に乳房や性器が描かれている。

 

臓物や植物に身体がグロテスクに変形といったデフォルメや、ナイフやドクロやさまざまな小道具やオブジェが配置されるといった詩的表現は少なく、純粋にエロティシズム性の強いSM絵画となっている。

「霧の中」(2006年)
「霧の中」(2006年)
「囚われて」(2006年)
「囚われて」(2006年)

ヘルマフロディトゥス


後半は表紙にもなっている「ヘルマフロディトゥス」シリーズ。おそらく本作品の一番の見どころ。

 

前作品集では身体部分がグロテスクに植物化していたが、本作品では以前の植物化された身体が骨、皮、内臓、血管、肉に変容して再身体化。色彩全体は炎や血のように赤みがかっており、山本タカト作品においてはかなりグロテスクなシリーズに属する。

 

ちなみにヘルマプロディートスはギリシア神話に登場する両性具有の神である。

「ヘルマフロディトゥスの醸成」(2008年)
「ヘルマフロディトゥスの醸成」(2008年)
「聖域の生成変化」(2008年)
「聖域の生成変化」(2008年)