【前衛運動】抽象表現主義「アメリカ発の前衛芸術が登場」

抽象表現主義 / Abstract expressionism

アメリカオリジナルの前衛美術が登場


ジャクソン・ポロック「インディアンレッドの地の壁画」1950年 
ジャクソン・ポロック「インディアンレッドの地の壁画」1950年 

概要


アメリカ発の前衛美術が登場


抽象表現主義は、第二次世界大戦後の1940年代のニューヨークで発生し、発展したアメリカの芸術運動。国際的に影響を持ったアメリカで最初の前衛芸術運動であり、西洋アートワールドの中心地がパリからニューヨークへ明確に移り変わった転換点でもある。

 

"抽象表現主義"という言葉は、1946年にアメリカの美術批評家のロバート・コーツがアメリカ美術の文脈にあてはめて使い始めたが、言葉そのものが現れたのは1919年のドイツの前衛芸術誌『デア・ストラウム』紙上である。アメリカでは1929年に美術史家のアルフレド・バルが、ワシリー・カンディンスキーの作品を関連付ける形でこの言葉を使用している。

 

 

抽象表現主義の画家たちの大半はニューヨークを拠点として活動したため、ニューヨーク・スクールと呼ばれることもある。20世紀前半はパリが美術の中心だが、第二次大戦後は廃墟となったパリにかわってニューヨークに芸術家たちは集まってきた。

 

抽象表現主義の中心となるのはジャクソン・ポロック。床に置いた大きなキャンバスに絵具をしたたらせる技法「ドリッピング」によって、作品を作るという行為をそのままキャンバスに表現する「アクション・ペインティング」を始めた。

オートマティスムの発展


抽象表現主義の成立にはシュルレアリスムの影響が大きい

 

第二次大戦の危機が迫ると多くのヨーロッパの画家がアメリカに亡命したが、その際、マックス・エルンスト、イブ・タンギー、アンドレ・マッソン、といった有力なシュルレアリストがニューヨーク・スクールの長老格ハンス・ホフマンが設立した美術学校で教鞭をとり、アメリカの若い画家たちに美術教育を行った。

 

シュルレアリスムには、大きくデペインズマン系とオートマティスム系の二派にわかれるが、アメリカでは特にオートマティスムの理論と実践がジャクソン・ポロックをはじめとする若い画家たちに多大な影響を与えた。

 

キャンバスを床に寝かせて描くジャクソン・ポロックのドリッピング手法は、アンドレ・マッソン、マックス・エルンスト、ダビッド・アルファロ・シケイロスの作品をルーツとしている。

 

新しい研究者の中には亡命シュルレアリストのウォルフガング・パーレンのトーテムアート論からの影響を主張するものもいる。パーレンが1943年に刊行したエッセイ『トーテム・アート』は、イサム・ノグチ、マーサ・グレアム、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、バーネット・ニューマンに影響を与えている。1944年頃にバーネット・ニューマンはアメリカの新しい芸術運動を説明し、パーレンの芸術を新しい芸術運動を牽引する人物の一人として紹介している。

 

ほかに、抽象表現主義運動創設のキーパーソンとなるのはロバート・マザーウェルである。彼はロベルト・マッタやウォルフガング・パーレーンなど、ヨーロッパのシュルレアリストと交流を深め、彼らが好んでいた無意識を表現するオートマティスム手法を独自に改良。それはアメリカ・オリジナルの前衛芸術運動となる抽象表現主義の基礎理論となった。

 

マザーウェルは、ジャクソン・ポロックウィレム・デ・クーニングマーク・ロスコニューヨーク・スクールのメンバーを支持し、彼らとともに抽象表現主義運動を展開する。 

内面を抽象的に表現


アクション・ペインティングのもう1人の有名な画家として、ウィレム・デ・クーニングが挙げられる。激しい筆遣いで女性像を半ば抽象化し、これまでの人物描写の伝統を破壊した。

 

フォーヴィスムやドイツ表現主義の流れを組むこともあり、内的感情を前面に押し出した抽象的な様式のため"抽象表現主義”と呼ばれる。

ヴィレム・デ・クーニング「女」(1950-52年)
ヴィレム・デ・クーニング「女」(1950-52年)

ミニマル・アートの先駆 ロスコ


マーク・ロスコもまた、抽象表現主義の代表的な作家の1人。シュルレアリスムに影響を受けたロスコは、「死」「官能性」「緊張」「アイロニー」「機知と遊び心」「はかなさと偶然性」「希望」という7つの成分を元に、「悲劇」をテーマとした絵画を制作。


地層のように絵具を配置する抽象構成でもって、悲劇的な内面を表現する。このロスコの手法はそのあとのミニマル・アートへ引き継がれていくことになった。

マーク・ロスコ「オレンジの上に緑と赤」(1951年)
マーク・ロスコ「オレンジの上に緑と赤」(1951年)

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