【美術解説】タマグラアニメ博2014「物語性」

タマグラアニメ博2014「物語性」


多摩美術大学グラフィックデザイン科主催のアニメーション上映会『タマグラアニメ博2014』を見に、渋谷アップリンクに行ってきました。プログラムはA~Fの6種類用意されているのですが、Eプログラム「Ottawa Animation Fest. Winning Reel」とFプログラム「Graduated and Master Works 2014」だけ見てきました。

 

Eプログラムは、昨年9月にカナダ・オタワにて開催された『オタワ国際アニメーションフェスティバル』の学生・学校部門「Animation School Showreel」に出品した多摩美生の作品上映だったのですが、イベントが始まって一番最初に流れた久野遥子『Airy Me』が一番よかったです。

 

大友克洋のようなジャパニメーション+バイオSFというかんじで、ュルレアリスム的キモカワポップで、今回のアニメーション群の中では僕が一番好むような作品でした。この素晴らしい作品が、ウェブ上にアップロードされているので、ぜひ見てください。

Cuushe - Airy Me from flau on Vimeo.

 

こちらに久野さんのインタビュー記事がありますが、以下の文が気になりました。

漫画は中学生くらいから描いているんです。担当さんがついたものの、子供の描くものなので色々アドバイスをもらいました。一番印象的だったのは、物語に対して「感覚で描くな。構造的に考えろ」と言われたことでした。

「構造(物語)(論理性)」というものが、絵描きにせよアニメーション作家にせよ、今のアーティストの多くは全く作れなくなってきて、ただ快楽原則で手を動かしているだけ(カオス)の人が多くなってきているので、今後はもう少し構造のある作品が若い人の中で増えていく予兆になればよいかなと思いました。

 

Fプログラムの卒業生の作品を見ても、これまでのタマグラアニメ卒業生と比較すると、単純な意味での「アニメーション」としては、少し物足りないのですが、物語性の強い作品が増えている感じがして、近藤さんとか水江さんの世代とは違ったらカラーの世代(物語性)に移行しつつある時期かと思いました。どちらかといえば、黄金期の世代は逆に「とにかく手を動かせ、感覚で描け」という哲学だったと思います。

 

あと、黄金期のタマグラアニメ世代との変化は、ギャグ系シュルレアリムが増えたとおもう。昨年はぬQさんが代表的な人だったけど、オタワ国際アニメーション映画祭で参加したメンバーでは、姫田真武さんや冠木佐和子さんがギャグ系シュルレアリムで人気だったようです。冠木佐和子さんの「肛門的重苦」オタワで大爆笑だったらしいです。

ほかに卒業生では、朴美玲さんの「夢かもしれない話」が良かった。走馬灯の世界を旅しているような話で、お爺さんが、どんどん若返って過去の自分の重大なイベント(結婚、出産、入学式とか)の旅に出かける話。その作品はウェブ上にはないですが、別作品がYouTubeにありました。