【完全解説】ヒグチユウコ「猫のイラストレーター」

ヒグチユウコ / Yuko Higuchi

猫で人気のイラストレーター


概要


ヒグチユウコは、日本の画家、イラストレーター、絵本作家。多摩美術大学卒。福沢一郎賞受賞。展覧会を中心に作品を発表している。

 

かわいさとダークさが混在した童話風の絵柄が特徴。最も知られている作品は、細密描写で描かれる擬人化された猫の絵。またSNSで発表しているお絵かき&写真日記に登場する飼い猫「ボリス」も作品と並行して人気を集めている。

 

コラボレーション活動が活発なことでも知られる。企業&ブランドではホルベイン画材、資生堂、ユニクロ、Emily Temple cute、あちゃちゅむ、メラントリックヘムライト、また中川翔子のブランド「mmts」とコラボレーション商品を手がけている。

 

著書に画集「Higuchi Yuko Artwork ヒグチユウコ作品集」(グラフィック社)、絵本「ふたりのねこ」(祥伝社)、「MUSEUM ミュージアム ヒグチユウコ塗り絵本」(グラフィック社)。

書籍作品


1st作品集「ヒグチユウコ作品集」(2012年)
1st作品集「ヒグチユウコ作品集」(2012年)
ポストカードブック「ヒグチユウコ ポストカードブック」(2014年)
ポストカードブック「ヒグチユウコ ポストカードブック」(2014年)
絵本「ふたりのねこ」(2014年)
絵本「ふたりのねこ」(2014年)
塗り絵本「MUSEUM ミュージアム ヒグチユウコ塗り絵本」(2015年)
塗り絵本「MUSEUM ミュージアム ヒグチユウコ塗り絵本」(2015年)

略歴


絵のルーツ


小さな頃から絵を描くのが好きで、特に細密描写で動植物をそっくり描くのが得意だった。実家にはずっと猫がいて、子どもを産ませてもいたので、常に何匹も猫がいる状況で育ったという。なお、小学校時代にはテリア犬を拾って飼ってもおり、幼少の頃は特に猫派というわけでもなかったという。

 

影響を受けている作家は、宇野亜喜良、諸星大二郎、伊藤潤二、楳図かずお、サルバドール・ダリヘンリー・ダーガー、手塚治虫、絵金の屏風絵、河鍋暁斎、フンデルト・ヴァッサーなど。

 

予備校で絵の勉強し、多摩美術大学油絵科に入学。大学時代は人物画が中心だったが、頭がなかったり、胴体しかなかったり、皮膚のかんじも暗く、少しグロテスクな作風で、当時は画だけを見たら男性の作家だと間違われることも多かったという。また、大学ではモデルを呼ぶことができたので、女性の身体をたくさん描いていた。

 

サークルは全く入らずアトリエからほとんど出ず、アトリエで知り合った気の合う一部の人だけが友だちだった。ヒグチの協調性のなさは、幼少の頃からで、まず先生という存在が苦手で、学校になじめなかったという。

 

大学四年生のときに教授からどこかに属するのがいやならとにかくコンスタントに個展をするようアドバイスを受け、1998年頃から、年に1〜2回の個展を中心に本格的に作家活動を行うようになる。この頃は完全に美術家志望だったため、イラスト的な仕事は一切せず、考えもしていなかった。2000年には第5回福沢一郎賞を受賞。2001年と2002年の「トーキョーワンダーウォール」に入選する。

狂ったようにカエルを描いていた


2003年ごろから3〜4年間ほど人物画を離れて、カエルにテーマを絞った作品になる。大きなカエルから小さなカエルまでカエルばかりを狂ったように描いていた時期で、この頃、まだ猫は描いていない。

 

その後、カエルが苦手という人が周りに結構いるとわかってからカエルだけでなく、木の根のように増殖しているもの、そしてタコ、猫、キノコ、クラゲなども描き始める。選んでいるモチーフは身近に自分が気になるものばかりで、かつ怖い危険な生物が多い。描くモチーフを探しに出かけるといったとことはなかったという(現在も)。

 

また、これまではあまり売ることを考えず大きな絵ばかり描いていたが、カエル時代の途中から徐々に小さな作品を描くようになる。小さい絵を描き始めたのも絵の中にモチーフが増えてきたのも、自分一人で描いて終わりではないもの、外部の人を意識し始めたからだという。

トーキョーワンダーサイトで展示された10メートルを超えるカエル絵。狂ったようにカエルばかりを描いていた時期だという。
トーキョーワンダーサイトで展示された10メートルを超えるカエル絵。狂ったようにカエルばかりを描いていた時期だという。
2006年ごろ。カエルだけでなく猫や植物などさまざまな生物が現れ始める。
2006年ごろ。カエルだけでなく猫や植物などさまざまな生物が現れ始める。

猫のボリスと出産


ボリス氏。オスでけっこう凶暴だそう。
ボリス氏。オスでけっこう凶暴だそう。

ボリスとの出会いのきっかけは子猫の里親募集張り紙。

 

車に轢かれて怪我をした野良猫のボリスの母親のお腹にいたのがボリスだった。

 

そのボリスの母猫を保護した人が、お腹にいた子猫たちの里親を探すために、張り紙で告知されていた子猫の一匹がボリスだった。

 

ヒグチがボリスに初めて会ったのは生まれて一ヶ月半くらいのころで、三ヶ月後にひきとる。ボリスを飼いはじめてしばらく経つと、子どもができるようになる。その後、子育てのため3年近く画家の活動を控える。なお、量産タイプということもあり、子どもが1,2歳のときは外出できないので、家で描いた原画をサイトにアップロードして販売をしていたことがある。

活動再開


ヒグチユウコ×mmtsのコラボレーション
ヒグチユウコ×mmtsのコラボレーション

絵描きの活動を再開したのは2010年ぐらいから。育児の忙しさが、逆に以前よりも良い意味で影響を及ぼすようになる。また創作インスピレーションも子どもから得る機会も多くなる。

 

ボリスとの暮らしを通して、猫のモチーフに対するイメージがどんどん広がり、猫の絵を描くことが増える。

 

再開後は、展示活動だけでなく企業やブランドのコラボーレション商品の仕事が多くなる。代表的なコラボ商品は2011年よりスタートしたホルベイン画材の「アーティストコラボ」シリーズ

 

クロッキーメモ、クロッキーブック、お道具箱、マスキングテープなどアイテムを変えながら多数の制作を現在も展開している。

 

ほかに資生堂、ユニクロ、Emily Temple cute、あちゃちゅむ、メラントリックヘムライト、また中川翔子のブランド「mmts」とコラボレーション商品を手がけている。

 

なお当初は、カエルばかりを描いていた時代のように、意識的に猫ばかり描こうと思っていたわけではなかった。仕事の中で次第に企業から猫の絵のリクエストが多くなってきたのが理由で、またTwitterで猫の写真や日記をアップロードするようになって、さらに「猫の人」になってしまったという。

  

2012年は初作品集となる「ヒグチユウコ作品集」を刊行。2014年に絵本「ふたりのねこ」、同年ポストカードブック「ヒグチユウコ ポストカードブック」を刊行。2015年に塗り絵本「MUSEUM ミュージアム」を刊行する。

 

2015年11月に発売された絵本「せかいいちのねこ」は、MOEの連載を1冊にまとめたもの。主人公のぬいぐるみのニャンコは、息子が大事にしていた猫のぬいぐるみが創作源泉となっている。

 

2016年9月8日、Twitterで繰り広げる、ゆるくシュールな日常4コマ(+α)である#ヒグチユウコ絵日記をまとめた「ボリス絵日記」を刊行。また翌日、9月9日イラストを100枚のポストカード「ヒグチユウコ 100POSTCARDS」を刊行。

 

2016年9月14日、猫ではなく少女がメインの絵本「すきになったら」を刊行。

 

■参考文献

・「イラストレーション」2014年9月号

・月刊「モエ」2015年6月号


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