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【美術解説】イギリス・「ダリ・ユニバース」

ダリ・ユニバース

彫刻中心のイギリスのダリコレクション


ダリ・ユニバース前に展示された記憶の固執の彫刻。
ダリ・ユニバース前に展示された記憶の固執の彫刻。

ビッグベン前に500点以上ものダリ作品!


ダリ・ユニバースはイギリスのロンドン、サウス・バンクにあったサルバドール・ダリ作品の半常設展である。展示そのものは2010年に終了している。ダリ・ユニバースは2000年にカントリーホール内にあった3000㎡のギャラリー敷地で展示された。

 

絵画中心のほかのダリ美術館と異なり、ダリ・ユニバースは1935年から1984年にかけて制作されたダリの彫刻作品が中心ほかにもグラフィック・アート、コラージュ作品、金を使った作品、ガラス作品、超現実オブジェ、さらにダリが影響を受けた家具など約500点の作品が展示されていた。

 

唯一あった絵画はアルフレッド・ヒッチコックによる映画『白い恐怖』のために制作された巨大な油絵のみだった。

 

公式サイト:http://www.thedaliuniverse.com

3つのテーマに分類して展示


当時、収蔵作品は「フェミニン感覚(Sensuality and Femininity)」「宗教と神話(Religion and Mythology,)」「夢とファンタジー(Dreams and Fantasy)」という3つのテーマに沿って展示されていた。

 

古典文学を主題としてダリ独自の解釈を反映させた作品が多数あるが、そのような作品は「フェミニン感覚」に展示された。目玉は有名な「メイ・ウエストの唇ソファ」だった。ほかにも12点のカサノヴァのエロティックなドローイング、10点のロミオとジェリエットを主題としたリトグラフ作品が展示されていた。

 

ダリは生前、カトリック教会と関係が深く、実際に第二次世界大戦後はカトリックに回帰もした。「宗教と神話」では、ダリ作品の中でも「聖ジョージとドラゴン」や宗教性の強い作品が集められた。ダリのもっとも有名な1931年の作品「記憶の固執」の彫刻版やファンタジックな作品は「夢とファンタジー」に展示されていた。 

「メイ・ウエストの唇ソファ」
「メイ・ウエストの唇ソファ」

多くはイタリアでもっとも有名なコレクターが集めたもの


展示されている作品は、もともとダリのコレクターであったベニアミーノ・レヴィが蒐集したものである。

 

レビィ氏は、モダンアート・ワールドにおいて最も重要なコレクターの一人であり、またイタリアのコレクターコミュニティでもっとも有名な人物の一人でもある。ダリのほかにはマグリット、ミロ、マッソン、カンディンスキー、キリコ、ピカソなど多くの前衛芸術家の作品を収集した。

 

1960年代から70年代にかけてイタリアでもっとも有名なギャラリーの1つ「ギャラリー・レヴィ」のオーナーでもあり、ダリをはじめ世界標準のアートを紹介していた。

 

29点もの美術館レベルの彫刻、15点もの記念碑サイズの彫刻と10点ものジュエリー彫刻を所有していた。またダリと共同で彫刻作品を作っていたという。

 

彼が蒐集したダリ作品は、世界100箇所以上で貸し出され、展示されてきた。

終了後は世界各地で開催


常設展示は2010年1月に展示は終了したが、2011年から2013年までの間にヴェネツィア、フィレンツェ、ソレントなど世界各地でダリ・ユニバース企画の展覧会が開催されており、また、東京、上海、台北、シンガポールなど世界各地にダリ・ユニバースが所蔵する作品が貸出されている。

ダリ幻想ユニバース 上海

天才のダリの精神 台北