【作品解説】ジョージア・オキーフ「黒いアイリス」

黒いアイリス / Black Iris

「花」シリーズのマスターピース


概要


作者 ジョージア・オキーフ
制作年 1926年
メディア 油彩
サイズ 91.4 cm × 75.9 cm
所蔵者 メトロポリタン美術館

《黒いイリス》は1926年にジョージア・オキーフによって制作された油彩作品。91.4 cm × 75.9 cm。メトロポリタン美術館所蔵。

 

オキーフの初期作品のマスターピースの1つとされている。オキーフは1924年から花に焦点を当てた絵画作品を制作し始めており、本作品はそのシリーズの1つである。実際のサイズよりも、かなり拡大された形で花びら描かれており、普段、鑑賞者が見落としがちな花弁の詳細を観察することができる。

 

オキーフは本作を制作するためにさまざまな色を使っているが、全体的には暗い色合いに焦点を当てている。花の上の花弁を詳細に描くのにピンク、グレー、白を使用し、また下の花弁を描写するのにブラック、紫、栗色を使っている。白や明るい色を外側に使うことで、光源がなくても内側が明るく見えるように描いている。

 

オキーフは主題の「花」の有機的な美しさを表現する上で、光の重要性を非常に意識して描いたという。彼女の芸術は、自然における内的な生命力と、光に宿る力の結びつきへの信念を表現している。

 

美術史家のリンダ・ノックリンは本作品を女性器の形態学的メタファーであると解釈している。1939年にオキーフは作品を展示する際に美術史家たちの解釈を否定しており、自身の作品を性的なものに結びつけられることをひどく嫌っていた。ルイス・マンフォードは展示の様子について「強烈、性の大爆発、若者の性、思春期の性、成熟の性、娼婦館の十夜におけるきらびやか性」とコメントしている。

 

本作品は、1927年1月11日から2月27日にまで、ニューヨークのギャラリーで初めて展示された。当時のカタログには作品名は《DARK IRIS NO. 3》と記載されている。以前の展示と異なり、この展示では高い評価を受けたい鮮やかな絵画はほとんどなかった。

 

1926年から1969年までアルフレッド・スティーグリッツのコレクションの1作品だった。