【作品解説】アンディ・ウォーホル「キャンベルスープの缶」

キャンベルのスープ缶 / Campbell's Soup Cans

最も有名なアンディ・ウォーホルの作品


アンディ・ウォーホル「キャンベルスープの缶」(1962年)
アンディ・ウォーホル「キャンベルスープの缶」(1962年)

概要


作者 アンディ・ウォーホル
制作年 1962年
メディウム シルクスクリーン合成高分子、キャンバス
サイズ 51 cm × 41 cm×32枚
コレクション ニューヨーク近代美術館

「キャンベルスープの缶」または「32のキャンベルスープの缶」は、1962年にアンディ・ウォーホルが制作した作品。32枚の51 cm × 41 cmのキャンバスから構成されている作品。

 

おのおのキャンバス、当時のキャンベル・スープ・カンパニーが販売していた32種類のスープ缶が描かれている。各作品は版画の手法、非絵画的で半機械化されたシルクスクリーン印刷で制作されている。

 

「キャンベルスープの缶」は、大衆文化から主題を得ることで、アメリカにおける大きな前衛芸術運動であるポップ・アートの生成と発展を導いた。また、「キャンベルスープの缶」で上げたウォーホルの名声は、最も有名なアメリカのポップ・アートティストにしただけでなく現存する最も高価なアメリカ人美術家の作品となった。

商業作家からファイン・アート作家へ転向


制作した頃のウォーホルは、すでに商業イラストレーターとして成功しており、ファイン・アートへ転向しようと考えた時期だった。

 

1962年9月にアンディ・ウォーホルのファイン・アート作家としての初個展がカリフォルニア州ロサンゼルスのフェルースギャラリーで開催された。また、この展示は西海外におけるポップ・アートの初展示でもあった。

 

展示会場では、一見すると同じように見える作品が一斉に壁にかけられ、それはスーパーの食料品店の雑貨棚にぶらさがっているようだった。32枚というキャンバスの数は、当時キャンベル・スープ・カンパニーが販売していた種類の数に対応していた。ウォーホルはキャンベル・スープ社の商品リストを参照にして、各作品に異なる味付けの名前を記している。

nstallation view, Ferus Gallery, Los Angeles, 1962, with Campbell’s Soup Cans. Photograph: Seymour Rosen. © SPACES—Saving and Preserving Arts and Cultural Environments
nstallation view, Ferus Gallery, Los Angeles, 1962, with Campbell’s Soup Cans. Photograph: Seymour Rosen. © SPACES—Saving and Preserving Arts and Cultural Environments

抽象表現主義に反発


半機械化された制作プロセスや、非絵画的なスタイル、さらに世俗的であつかましく感じる商業的なモチーフを大きく扱ったこの作品は、それまでアメリカの美術業界を先導していた抽象表現芸術の哲学や技術を直接的に侮辱した表現だった。

 

抽象表現主義運動はファイン・アートの価値だけでなく、どこか禁欲的で神秘的な雰囲気を漂わせていた。そうした環境の中で「キャンベルスープの缶」の登場は、倫理性や美術的価値において大きな論争を引き起こした。

 

ファイン・アートへ転向したウォーホルの動機が疑問視され、今日においてもその問題は続いている。

ほかのポップ・アーティストと明らかに違う記号性


「キャンベルスープの缶」は、ほかのポップ・アーティストたちとの差別化にもつながった。ポップ・アーティストの多くは、さまざまなマンガ、映画スターの写真、新聞紙など大衆文化のイメージを使って作品を構成していたが、「キャンベルスープの缶」は、ウォーホルの名前とキャンベルのスープ缶が同義語として語られるようになった。つまり、キャンベルのスープ缶はウォーホルを指し示す記号になった。

 

これは、マリリン・モンローとセックスを同義語として語るのちの作品にも言える。マリリン・モンローや毛沢東など、マスコミの世界や商業の世界からさまざまな大衆的イメージを借りて制作を行った。

 

その後、ウォーホルは彼の芸術キャリアにおける3つの異なるフェーズでキャンベルスープの缶を使ったさまざまな芸術作品を制作している。

セックスと同義語であるマリリン・モンローの記号性を利用した作品。
セックスと同義語であるマリリン・モンローの記号性を利用した作品。

広告業界いたウォーホルならではの反復手法


同じ大きさで同じイメージを繰り返して、キャンベル缶の均一性や偏在性を強調することで、発明性や独創性のメディウムとして絵画の理想を覆した。

 

このような視覚的反復行為は、広告業界が長い間、一般庶民の意識に浸透させるために利用してきた手法でもあった。しかし、ウォーホルにとってキャンベル缶の反復は真摯的なものの象徴だった。

 

アートワールドの外部で50年以上変わることのなかったキャンベル缶についてウォーホルは「私の昼食は20年以上、毎日毎日ずっとキャンベルスープ缶だった」と語っている。

キャンベルスープの缶作品とウォーホルのアトリエ。
キャンベルスープの缶作品とウォーホルのアトリエ。