【作品解説】ルネ・マグリット「黒魔術」

黒魔術 / Black Magic

エロティシズムを媒介に伝統美術と前衛美術を融合


ルネ・マグリット「黒魔術」(1945年)
ルネ・マグリット「黒魔術」(1945年)

概要


作者 ルネ・マグリット
制作年 1945年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 73 cm × 54.4 cm
コレクション ベルギー王立美術館

「黒魔術」は1945年にルネ・マグリットによって制作された油彩作品。マグリットの全ヌード作品で最も評価の高い作品と言われている。モデルは妻ジョルジェットで、ジョルジェットの上半身と青空と大理石の彫像とが融合したシュルレアリスム作品である。

 

マグリットは、印象派という当時の前衛美術ムーブメントから画家をはじめた。未来主義、キュビスムなど当時の前衛ムーブメントの技術を次々と取り入れながら、キャリアを形成していった。そして、若い頃のマグリット作品の大半は前衛的で描かれた女性のヌード画だった

 

しかし、本作「黒魔術」では、マグリットが嫌がっていた西洋伝統美術における基礎デッサンを踏襲した絵画様式で身体が描かれている。これはなぜかというと、ジョルジェットの身体プロポーションの美しさを前衛的な荒々しい表現で破壊しないよう注意し、尊重しているためである。大理石彫像には「永遠性」が込められている。

 

しかしながら、この伝統的で写実で描かれた女性の上半身は、青空と一体化して、普通では考えられない冷たい身体カラーとなっている。伝統的な写実女性ヌードを青色のクーリングカラーでシュルレアリスティックに描く、ここに前衛美術家としてのマグリットの主張が込められており、伝統美術と前衛美術が並存した状態になっている。

 

なお、ジョルジェットの右手は石の上に置かれているが、マグリットにとって石は地球を象徴していることがあるという。石に手を置くことは、地球への愛着と関連付けており、それは女性への愛着と関連付けている。

 

実際に絵画の存在理由の1つには、根底にエロティシズムがあるとマグリットは語っている。デュシャンも今後の美術の可能性の1つにエロティシズムがあると語っている。

 

■参考文献

タッシェン「ルネ・マグリット」

 

 

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