【作品解説】アンリ・マティス「金魚」

金魚 / Gold fish

モロッコ人の生活に影響を受けた作品


アンリ・マティス「金魚」(1912年)
アンリ・マティス「金魚」(1912年)

概要


作者 アンリ・マティス
制作年 1912年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 146 x 97 cm
コレクション プーシキン美術館

「金魚」は、1912年にアンリ・マティスによって制作された油彩作品。146 x 97 cm。モスクワのプーシキン美術館が所蔵している。

 

金魚は17世紀ごろに東アジアからヨーロッパに輸入された。1912年ごろから、金魚はマティス作品に定期的にあらわれるモチーフとなった。少なくとも9作品以上は金魚をモチーフにした作品を制作している。本作「金魚」は、ほかの作品と異なり、金魚そのものを主題とした作品である。

補色を意識して描かれている


金魚はその色のためにすぐに私たちの注目をひく。輝かしいオレンジ色の身体と、水槽を取り囲む背景や周囲の青緑とうっすらなピンクのテーブルが対照的である。

 

青色とオレンジ色、緑色と赤色は補色であり、隣り合って配置されることで明るく表示される。マティスが色の使い方をよく知っていることを表している。

モロッコ人のライフスタイルに影響


マティスが金魚に関心を持ち始めたきっかけは、1912年の1月末から4月まで滞在していたモロッコのタンジールに滞在したときに手がかりがあるとされている。

 

マティスは、そこで地元の人たちが何時間も水槽の中の金魚を夢見るような視線で眺めていることに驚いたという。

 

マティスは、この金魚をずっと眺めているモロッコ人のライフスタイルを賞賛し、モロッコのライフスタイルこそ瞑想的で人生をリラックスをして過ごしているよう感じたという。

 

つまり、マティスにとって金魚とは平穏な精神状態を象徴するモチーフだった。

Henri Matisse, Le café Maure(Arab Coffeehouse), 1911-13, oil on canvas, 176 x 210 cm (Hermitage Museum)
Henri Matisse, Le café Maure(Arab Coffeehouse), 1911-13, oil on canvas, 176 x 210 cm (Hermitage Museum)

「生きる喜び」とよく似た構図


金魚はマティスにとって「楽園」や「パラダイス」と関連があるとも指摘されている。この作品の構図と彼の楽園的な絵画の代表作である「生きる喜び」の構図は、描かれているモチーフこそ異なるものの非常によく似ている。また「金魚」という名称は、牧歌的な黄金時代の理想の住人を想起させる。

アンリ・マティス「生きる喜び」(1905-1906年)
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