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【作品解説】フィンセント・ファン・ゴッホ「オーヴェルの教会」

オーヴェルの教会 / The Church at Auvers

空虚で悟りのない教会


概要


作者 フィンセント・ファン・ゴッホ
制作年 1890年
サイズ 74 cm × 94 cm
メディウム キャンバスに油彩
所蔵者 パリ、オルセー美術館

《オーヴェルの教会》は、1890年にフィンセント・ファン・ゴッホによって制作された油彩画。実物の教会は、パリの北西27kmに位置するフランス、オーヴェル・シュル・オワーズ市のエグリーズ広場にある。本作品は、パリのオルセー美術館が所蔵している。

 

《オーヴェルの教会》は、「オーヴェールの市庁舎」や茅葺き屋根の小さな家を描いた他の作品とともに、ヌエネン時代の風景を彷彿とさせる。

 

サンレミでの病院の最後の数週間は、すでに北仏への郷愁が見え隠れしていた。オーヴェルへの出発の2週間ほど前に書いた手紙の中で、「病気の間、私は記憶の中で小さなキャンバスを描いていたのですが、それは後で見ていただくとして、北の思い出です」と書いている。

 

1890年6月5日、妹のヴィルヘルミナに宛てた手紙の中で、この絵について説明したとき、彼はヌエネンに戻ってから行った同様の作業について具体的に言及している。

 

「村の教会の大きな絵があります。シンプルな深い青色、純粋なコバルト色の空を背景に、建物が紫色に見える。ステンドグラスの窓は群青色のしみのように見え、屋根は紫色と部分的にオレンジ色をしている。手前には緑の植物が咲き乱れ、砂には太陽の光のピンク色の流れがある。これはヌエネンで描いた古い塔と墓地の絵とほとんど同じだが、今の絵の方がより表情豊かで、より豪華な色彩になっているのだろう」。

 

この「シンプルな深い青」は、同じ時期にオーヴェル・シュル・オワーズで描かれた《アデリーヌ・ラヴーの肖像》にも使われている。

 

《オーヴェールの教会》の前景は太陽によって明るく照らされているが、教会自体は自らの影の中にあり、「自らの光を反射することも発することもない」のである。

 

ゴッホがこのような暗い教会を描いているのは、過去にプロテスタントの牧師になろうとして挫折した経験が背景にある。

 

1880年7月の弟テオへの手紙で、シェイクスピアの『ヘンリー四世』第一部から「空虚で悟りのない説教」の象徴として教会を説明している。ゴッホによれば、シェイクスピアの酔っぱらいファルスタッフの神のようだという。

 

教会前の道が別れているが、これは《カラスのいる麦畑》でも描かれている。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Van_Gogh%27s_Chair、2022年6月12日アクセス