【作品解説】マルク・シャガール「7本指の自画像」

7本指の自画像 / Self Portrait with Seven Fingers

近代的なパリと伝統的なロシアを並列


マルク・シャガール「7本指の自画像」(1912-1913年)
マルク・シャガール「7本指の自画像」(1912-1913年)

概要


「7本指の自画像」は、1912年から13年にかけてマルク・シャガールによって制作された油彩作品。シャガールがロシアから前衛芸術の中心地パリへ移った直後に描かれた作品。パリという近代的な世界に身を置いている伝統的なユダヤ文化で育ったシャガールの複雑な心性を表現している。

 

シャガールの後ろにある窓からは、近代や都会を象徴するパリのエッフェル塔が見える。そのきらびやかなエッフェル塔に背くように、暗いこわばった表情のシャガールがキャンバスに描いているのは、ドリーミーでファンタジックな動物や自然の風景である。これは、彼が幼少の頃に育ったロシアの故郷ヴィーツェプスクの風景である。また、頭上の雲の中にも同じくヴィーツェプスクが描かれている。

 

この頃は、シャガールがキュビスムに影響を受け始めた時期でもある。そのためシャガールの身体や室内などはキュビスムや抽象絵画に影響を受けた幾何学的な形態で描かれている。しかし、キャンバスの絵は対照的に具象であり、ファンジックな優しいタッチで描かれている。

 

つまり、パリという現実世界と故郷ロシアのノスタルジックな世界の狭間が並列化していることが分かる。

 

なお、シャガールの左手の指は7本あるが、7は1887年7月7日に生まれたシャガールにとって大きな意味があるようだ。