201.ヤン・シュヴァンクマイエル「シュルレアリスム・アニメーション」

ヤン・シュヴァンクマイエル / Jan Švankmajer

チェコ・シュルレアリスムの巨匠

「地下室の怪」(1983年)
「地下室の怪」(1983年)

概要


ヤン・シュヴァン・クマイエル(1934年9月生まれ)は、チェコの映画監督、またさまざまなメディアを通して作品を発表している美術家。


自身の作品をシュルレアリスムと銘打つのが特徴で、テリー・ギリアムやクエイ兄弟をはじめ多くのアーティストに多大な影響を与えている。


今日、シュヴァンクマイエルは世界で最も有名なアニメーターの1人である。長編映画のベスト作品は『アリス』(1988)、『ファウスト』(1994年)、『悦楽共犯者』(1996年)、『オテサーネク』(2000年)、『ルナシー』(2005年)である。


現在制作中の作品は『昆虫』。4000万チェコ・コルナ(1億円程度)の制作予算で2015年に公開を予定している。20世紀初頭の作家カレル・チャペックの戯曲『虫の生活から』を下敷きにしており、シュヴァンクマイエルは「このチャペックの戯曲は非常に厭世的なもので、私のお気に入り作品だ。昆虫は人間のように振る舞い、また人間は昆虫のようにふるまう。フランツ・カフカの有名作品『変身』を思い起こすだろう」

略歴


ヤン・シュヴァンクマイエルは、ドイツ系ボヘミア州時代のプラハで陳列窓の装飾家である父と裁縫婦の母に生まれた。プラハはのちにチェコに同化。後年、芸術の発展する上でシュヴァンクマイエルに影響を与えたものは、子どものときにクリスマス時に楽しんだ人形劇だった。


プラハ応用芸術大学で学んだ後、プラハ芸術大学の人形劇科に入学。1958年にエミール・ラドックの映画「ファウスト博士」に参加したのち、プラハのセマフォ映画館で働き始める。そこで「マスク劇場」を創設。


その後、ラテルナ・マギカ劇場へ場を移し、そこでエミール・ラドックとの関係をやりなおした。この時代の経験はのちに、1964年に上映されたシュヴァンクマイエルの初作品『シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック』に反映された。


劇作家で理論家のヴラチスラフ・エッフェンベルゲルの影響のもと、シュヴァンクマイエルは、初期作品のマニエリスムからシュルレアリスムへ移行。『庭園』 で初めて自身をシュルレアリストであることを明白にし、チェコスロバキア・シュルレアリスム・グループに参加。


シュヴァンクマイエルは、同じチェコ・シュルレアリスム・グループのメンバーで、国際的なシュルレアリスム画家、陶芸家、作家として国際的に知られるエヴァ・シュヴァンクマイエルと結婚。彼女とは『アリス』『ファウスト』『オテサーネク』など複数の作品でコラボレートしている。ヤンとエヴァには、ヴェロニカ(1963年生まれ)とヴァクラ(1975年生まれ)の二人の子どもがいる。

作風


ヤン・シュヴァンクマイエルは、ストップモーション技術やシュルレアリスムや悪夢のような表現、さらにどことなく面白い写真において数十年にわたって高い評価を得ており、現在もプラハで映画を作り続けている。


シュヴァンクマイエル作品の特徴としてまず挙げられるのは、人形を使ったコマ撮りのストップモーション・アニメーションである。次にガラスの割れる大きな音や食事シーンにおけるクチャクチャした奇妙な食べる音といった大げさな効果音である。また食べ物は、シュヴァンクマイエルが好む主題でありメディアムである。最近はアニメーションよりも実写撮影が多くなっているけども、作品の基本はストップモーション・アニメーションである。

 

シュヴァンクマイエルの映画の大半は「地下室の怪」のような子どもの視点から着想を得た制作された短編で、また不安感や攻撃的な性質を宿している。

 

1972年に共産党政権はシュヴァンクマイエルに対して映画制作を禁止させ、彼の映画の大半は規制された。そのため1980年代初頭まで西洋でほとんど彼の作品が知られることはなかった。

 

批評家のアンドリュー·ジョンストンは、ニューヨーク・タイムズでシュヴァンクマイエルの作品を絶賛し、「彼の映画は文化的で科学的な要素を含んでいるだけでなく、その不思議なヴィジュアルイメージは、だれもの集合的無意識に触れる感覚を持っており、シンプルに視覚的娯楽を人々に与える要素がある。」